初心者でもわかる「リターゲティング広告とは?」仕組みやメリットを解説
Web広告の中でも高い成約率が期待できる「リターゲティング広告」は多くの企業で採用されています。「自社サイトへの訪問者は増えてきたものの、あと一歩、コンバージョンにつながらない」といったときに強い味方になる広告です。
この記事ではリターゲティング広告の概要と仕組み、メリットやデメリットを紹介します。効果的な使い方だけではなく、リターゲティング広告が持つリスクもお伝えします。社内で検討する際の資料として、ぜひご活用ください。
リターゲティング広告とは
リターゲティング広告とは、一度、自社のWebサイトに訪れたユーザーに対して広告を表示させることで購買や成約を狙う手法を指します。
例えばECサイトで商品を検索し、後日、他のサイトを閲覧しているときにバナー広告で閲覧した商品が表示される、という経験をしたことはありませんでしょうか。これが典型的なリターゲティング広告です。

リターゲティング広告の最大の特徴が、すでにその商材に興味を抱くユーザーに対して訴求することです。「見込み客」に訴求することで高い成約率が期待できます。またすぐには成約につながらなかったとしても、繰り返し、自社の広告を表示させることで、ユーザーにとって「なんか気になる存在」になることができます。
リターゲティングの仕組み
リターゲティング広告が配信される仕組みは以下のとおりです。
- 広告タグの設置
広告主がサイトに訪れたユーザーの情報を取得するためのタグ(コード)を設置する - Cookieを利用してユーザー情報を記録
ユーザーがタグの設置されたサイトに訪れると、ユーザーのブラウザにCookieと呼ばれる情報が保存される。Cookieには訪問履歴や行動データが記録される - ユーザーの情報を蓄積
広告を配信するサーバーは、Cookieを通してユーザーに固有のIDを付与し、そのユーザーの情報を蓄積する(リストを作成する) - リターゲティング広告の配信
広告配信事業者はCookieに記録されたユーザーの行動履歴などを確認し、「訪問履歴があるが未購入」などの条件に合致したユーザーに広告を表示させる
リターゲティングで重要な「リスト」
リターゲティング広告の仕組みの中で肝になるのが、Cookieが付与されたユーザーの集まりである「リスト」です。
Cookieからは「自社サイトに訪問したかどうか」だけでなく、「訪問日時」「商品の購入に至ったか」「過去の購入履歴」などもわかります。これらの情報を適切に扱うことで、例えば「過去1週間以内にサイトに訪問したが、購入に至らなかったユーザーへの訴求」「1ヶ月前に購入したユーザーへ定期購入の促進」のような精度の高いターゲティングが可能になります。
このようにリスティング広告はリストを様々な条件でグループ分けすることにより、目的に合った効率の良い訴求を実現します。
リターゲティング広告を配信できる媒体と呼称、種類
リターゲティング広告は主要な配信事業者で採用されています。
- Google広告:リマーケティング、データセグメントなど
- Yahoo!広告:サイトリターゲティング
- Meta広告:リターゲティング
広告媒体によって呼び方は異なるものの、本質的な機能は同じです。
またリターゲティング広告は主にディスプレイ広告にて画像や動画の形式で配信されますが、リスティング広告やYouTubeなどの動画プラットフォーム、アプリなどで使用されることもあります。
関連:初心者でもわかる「ディスプレイ広告とは?」仕組みやメリットを解説
関連:初心者向け リスティング広告とは?今すぐ始めたくなるメリット・やり方を解説
リターゲティング広告への規制
このように便利なリターゲティング広告は、昨今ではプライバシー保護の観点から規制の動きが見られます。この規制には前述のCookieが関わります。
リターゲティング広告の規制を理解するためには、Cookieの種類について知る必要があります。Cookieには主に以下の2種類があります。
- ファーストパーティCookie
ユーザーが訪問しているWebサイトのドメインが発行する、訪問したサイト内でのみ機能するもの。ユーザーの利便性向上(ログイン情報やカートに入れた商品の記憶など)のために使用 - サードパーティCookie
ユーザーが訪問しているWebサイト以外のドメインが発行し、複数のWebサイトで横断して機能するもの。リターゲティング広告やマーケティングに使用
リターゲティング広告では広告配信会社(訪問したサイト以外)が発行したサードパーティCookieが使用され、Cookieの情報が複数のサイトで共有されます。
しかしこのサードパーティCookieは個人情報やプライバシーの侵害にあたるとして、主要なブラウザでは扱いを見直す動きがあります。
ブラウザ | サードパーティCookieへの取り組み |
---|---|
Google Chrome | 2025年までにサードパーティCookieを非推奨化する計画(過去に3度延長された) |
Apple Safari | 段階的に規制し、2020年にデフォルトでは全面的にブロック |
Microsoft Edge | 2024年現在、廃止に向けてテストを実施中 |
この結果、これまでの方法によるリターゲティング広告の精度や効果が限定的となる他、Cookieを使ったリターゲティングそのものができなくなる可能性もあります。
リターゲティング広告を配信する際は、最新の動向を注視する必要があります。
リターゲティング広告の費用
「リターゲティング広告はいくらから出せるのか」「費用相場はどれくらいか」が気になる方は多いでしょう。
結論、リターゲティング広告には最低出稿金額などの決まりはありません。あくまで配信方法の1つであり、使用する広告プラットフォームや広告の形態、商材や競合の状況によって大きく異なります。
例えばリターゲティング広告で採用されることが多い「ディスプレイ広告」は、以下の2種類の課金方式があります。
クリック課金 (CPC:Cost Per Click) | インプレッション課金 (CPM:Cost Per Mille) | |
---|---|---|
課金基準 | クリック毎に課金 | 1,000回表示されるごとに課金 |
費用相場 | 100円〜/クリック程度 ※競合などの条件による | 数百円/1,000回表示 ※競合などの条件による |
強み | ・クリックされない限り費用が発生しない・ある程度関心があるユーザーがクリックする→費用対効果が高い | ・露出回数が保証される・クリック回数が費用に関与しない(たくさんクリックされても費用が増えない)→クリック率が高い広告ほど、費用を抑えられる |
相性の良い訴求 | ・直接的な成果を求める場合・ターゲットを絞りたい場合 | ・ブランド認知の向上を目指す場合・露出を優先したい場合 |
関連:ディスプレイ広告とは
後述しますが、リターゲティング広告は見込み客に絞って配信されるため、他の広告よりも費用対効果は高いとされています。
リターゲティング広告のメリット
以下ではリターゲティング広告を使用するメリットを3つ紹介します。
- 高いコンバージョン率が期待できる
- 費用対効果が高い
- 単純接触効果(ザイオンス効果)により親近感が生まれる
高いコンバージョン率が期待できる
リターゲティング広告を使うことで高いコンバージョン率が期待できることは、ここまで説明してきたとおりです。すでに自社の商材を知っているユーザーへ再アプローチするため、新規ユーザーに対する広告よりも、購入や成約などにつながりやすくなります。
リターゲティング広告とリターゲティングを行わないディスプレイ広告とで比較したところ、リターゲティング広告の方がクリック率が10倍に達したというデータもあります。
クリック率が増えれば、その分、コンバージョン率の向上も期待できます。
費用対効果が高い
リターゲティング広告の費用対効果の高さも大きなメリットです。リターゲティング広告では無関心なユーザーへの広告表示を極力避けて、関心が高いユーザーに広告を表示させるため、ムダな広告費を減らせます。
また先述のとおり、コンバージョン率が高いことは、1件の成約を獲得するための広告費を抑えられることになります。リターゲティング広告を使うことで、顧客の獲得単価を数十%削減できることも、珍しくありません。
単純接触効果(ザイオンス効果)により親近感が生まれる
単純接触効果(ザイオンス効果)とは、ある対象に何度も繰り返し接触することで、知らず知らずのうちに好感度や親近感が高まる心理現象を指します。リターゲティング広告はこの単純接触効果を利用した広告手法です。
例えばリターゲティング広告と相性が良い商材の一つに「ユーザーの検討期間が長いもの」があります。
車や不動産など金額が大きな商材は、ユーザーの検討期間が長くなりがちです。その間に、リターゲティング広告で定期的に接触を繰り返すことにより、徐々に親近感を醸成し、良い印象を持たせ、成約の可能性を高められます。
リターゲティング広告のデメリット
リターゲティング広告は効果が高い一方で「諸刃の剣」のような特徴があります。以下ではリターゲティング広告のデメリットにも目を向けてみましょう。
- 潜在ユーザー・新規ユーザーにアプローチしづらい
- 「付きまとわれている感覚」「嫌悪感」を与えるリスクがある
- データの蓄積には一定期間が必要
潜在ユーザー・新規ユーザーにアプローチしづらい
リターゲティング広告は潜在・新規ユーザーへの訴求には向いていません。過去にサイトに訪れたことがあるユーザーに訴求する広告であり、自社のことを知らないユーザーには、当然ながら広告が配信されません。
リターゲティング広告は目的(コンバージョンの獲得)が明確な広告です。自社のことを知ってもらいたい、潜在的なニーズを持つユーザーに露出を増やしたい、というのであれば、リスティング広告やディスプレイ広告、SNSなどと組み合わせて利用するのが良いでしょう。
「付きまとわれている感覚」「嫌悪感」を与えるリスクがある
リターゲティング広告の特性上、ユーザーに対して「付きまとわれている」「気味が悪い」といったネガティブな感情を与えることがあります。
リターゲティング広告は有用な一方で、最悪、自社のブランドイメージを低下させる可能性もあることは、予め理解しておきたいところです。
できるだけ負の感情を与えることなく、リターゲティングするためには、1人のユーザーに対して表示させる広告の回数を制限したり(フリークエンシーキャップの設定)、表示期間の設定、クリエイティブを複数用意して、異なるデザインで訴求する、といった方法を取ることがおすすめです。
データの蓄積には一定期間が必要
リターゲティング広告はCookieを活用して配信するため、リストの作成に一定の期間が必要です。
例えばGoogle広告の場合、ディスプレイ広告には過去30日で100人以上、リスティング広告では同期間に1,000人以上のデータが必要になります。新規で立ち上げたサイトや認知度が低いサービスの場合、条件を満たすまでに時間がかかることがあります。
また広告の配信後も、データには有効期限があり長期的な効果を維持するためには継続的なデータの取得が必要です。このデータが不十分だと、広告効果が落ちることがあります。
リターゲティング広告を始める前には、十分なサイトトラフィックを確保する期間を設けることが重要です。
リターゲティング広告の出稿方法・やり方
先の「リターゲティング広告の仕組み」の項目でも触れましたが、リターゲティング広告を配信するための大まかな流れを理解しておきましょう。
- タグの取得・設置
GoogleやYahoo!など、リターゲティング広告を配信するプラットフォームからリターゲティングするための専用タグを取得して、サイトに設置する(多くの場合、</head>タグの直前に設置)。 - ユーザー情報の取得
タグによってサイト訪問者の行動を追跡して、Cookieに情報を記録する - リストの作成
広告を表示したユーザーのリストを作成する。例えば「◯日以内にサイトを訪問した全てのユーザー」「特定の商品のページを閲覧したユーザー」「カートに商品を追加したものの、購入に至らずにサイトから離脱してしまったユーザー」など - 広告キャンペーンの設定
広告の配信期間、予算、画像・動画・テキストなどの広告クリエイティブ、ターゲティングの条件(ユーザーの属性など)などを設定。「3」のリストと紐づけて広告を配信する
リターゲティング広告で成果を出すためのポイント
最後にリターゲティング広告を効率よく運用するためのポイントを確認します。
配信の頻度を適切化する
デメリットの項目でもお伝えしたように、リスティング広告はともすれば、ユーザーにネガティブな感情を与えかねません。昨今はSNSなどでネガティブな情報が拡散されることもあり、ブランドイメージが大きく毀損するリスクがあります。
このリスクを低減するためには配信頻度を適切に調整することが重要です。同じユーザーに表示させる上限回数、再表示させる期限を設けるなど、ユーザーに不快感を与えず、効率的に配信することが求められます。
ターゲティング精度を高める
ターゲティング精度を高めるためには、いかにリストを有効活用できるかが鍵を握ります。一例としてページ別、サイト訪問後の日数といったセグメント化はよく使われます。
ページ別については、例えばトップページだけ閲覧したユーザーと、特定の商品ページを閲覧して、商品をカートに入れたものの離脱してしまったユーザーとでは、後者の方が購入意欲が高いことは言うまでもありません。
また期間についても、一般的に初回の訪問時から時間が経つほど、ユーザーの関心は下がっていくという心理状態を考慮して、直近に訪問したユーザーへ優先して配信することが効果的です。
コンバージョンしたユーザーには非表示にする
「サイトを訪れたユーザーへ訴求する」という原則に基づくと、最初の訪問で購入に至ったユーザーも広告配信の対象に含まれてしまいます。ムダな広告費を消化しないためにも、すでにコンバージョンしたユーザーは表示対象から除外するのが良いでしょう。
ただし商材によってはリピート購入が期待できるものもあるため、自社商品の特徴によって、広告の表示 / 非表示を調整してみましょう。
まとめ
この記事では過去に自社のサイトに訪れたことがある、興味や関心が高いユーザーに対して配信する「リターゲティング広告」について、その特徴やメリット、デメリットなどを紹介しました。
- リターゲティング広告はブラウザの「Cookie」という仕組みを使ってユーザーの行動を記録して、条件(リスト)に合ったユーザーに広告を配信する
- プライバシーや個人情報の観点から、将来的にはCookieを使ったリターゲティングの手法に制限がかかる可能性がある
- 他の広告よりもコンバージョン率が高い、ムダな配信を抑えることで費用対効果が高い、単純接触効果が期待できる、などのメリットがある
- 新規ユーザーへの訴求や不特定多数のユーザーへの露出には向かない、付きまとわれているといったネガティブな感情を与える可能性がある、といったデメリットもある
リターゲティング広告は強力な効果を持つ一方で、個人情報の問題やマイナスなイメージを与えかねない「負」の側面もあります。これらの特徴をよく理解して他の広告と組み合わせて利用することにより、効率よく売上を伸ばすことができるはずです。
弊社では「IT人材や部署を持つほどではない」とお悩みの事業者さまへ、Web広告の運用を始めとした集客のサポートを行っています。小さなお悩みでも無料でご相談をお受けしております。少しでも興味をお持ちの方は、お気軽にご連絡ください。