マーケティングファネルとは|もう古い?新しいフレームワークや施策事例を紹介
新規顧客を獲得する上で、消費者がどう行動して購入・成約にたどり着いているかを知ることは、再現性を高めるために非常に重要です。業績が伸び悩んでいる企業の中にはこの行動を把握しきれておらず、効果的なマーケティング施策を打ち出せていないことがあります。
この記事では消費者の行動を明確にする基本的な考え方「マーケティングファネル」について、一から丁寧に解説します。
自社のビジネスに当てはめることで、現在課題になっている部分の把握や、その対処施策を検討しやすくなります。ぜひ、この記事でポイントを押さえ、売上の向上に活かしてください。
マーケティングファネルとは

マーケティングファネルとは、顧客や消費者がある商品・サービスを初めて知り、実際に購入に至るまでの流れを段階的に分類して、図に示したフレームワーク(型)です。
マーケティングファネルの歴史は古く、一説では1890年代にまで遡ると言われています。その後、1920年代に大量生産・大量消費の時代に入っていたアメリカで、実務書作家のサミュエル・ローランド・ホールが広告への消費者の心理プロセスを「AIDMAの法則」として紹介しました。

- Attention(注意):消費者が商品・サービスを初めて知る、認知する
- Interest(興味・関心):消費者が商品・サービスに興味を持ち、主体的に情報を調べ始める
- Desire(欲求):消費者が商品・サービスが自分にとって必要なものだと感じる
- Memory(記憶):消費者が商品・サービスを記憶する
- Action(行動):消費者が商品・サービスを実際に購入する
マーケティングファネルはこの「AIDMAの法則」をベースに図式化され、約1世紀に渡りマーケティングの基礎として活用されています。
【図説】マーケティングファネルの4段階

マーケティングファネルは「AIDMAの法則」から発展し、「認知(Attention)」「興味・関心(Interest)」「比較・検討(Desire)」「行動(Action)」の4段階で示されます。
「ファネル」とは漏斗(じょうご・ろうと)のことです。名前のとおり、消費者の心理プロセスが先に進むにつれ、細くなっています。これは認知の段階ではたくさんの人が存在するものの、次の段階に進むにつれて段々と少なくなっていき、最終的には限られた人だけが具体的な行動(購買・契約)を行うことを示しています。
以下では事例として、消費者が「AI搭載スマートフォン」を購入する体験をマーケティングファネルに当てはめてみましょう。
認知(Attention)
とある消費者はスマートフォンの買い替えを検討していました。そんなときにテレビでAIを搭載したスマートフォン「Google Pixel」のCMを見ました。
最近のスマートフォンにはAIの機能が組み込まれていて、写真を合成したり、簡単にAIとチャットで会話できることを知りました。
興味・関心(Interest)
CMを見て関心を持った消費者は何気なく「Google Pixel」と検索し、公式サイトやユーザーのレビューを見て、スペック、デザイン、カメラの性能、価格などを調べました。気づけばAI搭載スマートフォンにとても興味を持ち、いろんなサイトのレビューを見るようになりました。
比較・検討(Desire)
レビューを見ている中で、最近はGoogle以外にも、いろんなメーカーのスマホに独自のAIが搭載されていることを知りました。そこで「Apple(iPhone)」「Galaxy」「Xiaomi」などのメーカーのスマートフォンも調べて、スペックやAI体験の差、価格、メリット・デメリットなどを比較し、自分にはどのモデルが合うのか、より詳しく検討するようになりました。
行動(Action)
スペックや価格等を比較・検討した結果、自分のライフスタイルに最も合っていると感じたメーカーのAI搭載スマートフォンを購入することに決めて、オンラインショップで購入しました。
この様に、最初は不特定多数がテレビCMを閲覧しましたが、その中でも一部が関心を持ち、他のメーカとも比較検討し、最終的に限られた人がその商品を購入します。
これがマーケティングファネルの基本的な考え方です。
マーケティングファネルの目的
そもそも、なぜマーケティングファネルが必要なのでしょうか。自社の商品・サービスをマーケティングファネルに当てはめることには、以下のような目的・メリットがあります。
消費者の購買行動の流れを理解するため
マーケティングファネルでは顧客や消費者が自社の商品・サービスを認知してから実際に購入・契約するまでの流れを可視化します。ユーザーの行動を俯瞰することにより、ユーザーの心理状態の変化を予測できるようになります。ユーザーが次の段階に進むためにはどのような情報、機能・メリットの訴求が必要なのか考えやすくなります。
ボトルネックを特定するため

各段階の消費者の数の変化を追跡することによって、多くの人が離脱しているポイント=ボトルネックが特定できます。
例えば「認知」から「興味・関心」に進む過程で急激な見込み客の減少がみられる場合(上図)、認知の段階での施策を再検討することで、改善する可能性が高そうです。
例えば広告で十分な魅力や必要性が伝わっていなかったり、消費者が情報を収集するための導線、アシストが不足しているかもしれません。このように現在のマーケティング活動のどこに課題があるのかをあぶり出すためにも、マーケティングファネルの考え方は重要だと言えます。
それぞれの段階でのアプローチを明確にするため
4段階のそれぞれの段階で適切なアプローチを検討する際にも、マーケティングファネルは役立ちます。
例えば「認知」の段階ではコンテンツの発信や広告によって注目を集める施策が必要であり、「興味・関心」「比較・検討」ではより詳しい商品やサービスの特徴・メリット、競合との比較材料が求められます。そしてキャンペーンや簡単な購入手続きプロセスを用意して「購入」へと導きます。
このように各段階で有効なアプローチは異なります。これらを検討する際にマーケティングファネルによる情報の整理が役に立ちます。
最新のマーケティングファネルの種類
マーケティングファネルは約100年も前からある概念で、当時とは時代が大きく異なります。技術の進展などにより消費者の購買行動、企業のビジネスモデルは多様化しており、マーケティングファネルにも複数の形が用いられるようになりました。
以下では一般的に用いられる3種類のマーケティングファネルの概要を紹介します。
パーチェスファネル

パーチェスファネルはここまで説明してきた「AIDMAの法則」をベースとした、最も基本的なフレームワークです。
インフルエンスファネル

2つ目のマーケティングファネルが「インフルエンスファネル」です。インフルエンスファネルは消費者が商品・サービスを購入したあとの行動をモデル化しています。
インフルエンスファネルでは消費者は購入後に「継続」→「紹介」→「発信」という段階で行動すると定義しています。
商品・サービスを購入してもらったあと、できるだけ長く、継続して使ってもらうためには質の高いサービスの提供やアフターフォローが求められます。
消費者が商品やサービスに満足して継続して使うことで、自社のファンになります。ファンになってくれた人は周囲の家族や友人にその商品を紹介してくれるようになります。
さらにその人はSNSや口コミ、ブログなどで商品・サービスを発信し、不特定多数の人に広めてくれる可能性があります。
自社の顧客の購買後の行動を整理することで、「継続」「紹介」「発信」どの段階に課題があるかを可視化し、適切な施策が打てるようになります。
ところで昨今は消費者が買い物や契約をする際に口コミを参考にするのが当たり前の時代です。2016年の時点で、すでに6割強の人が「買い物の際に口コミを参考にする」と回答しています。

つまり売上を伸ばすためには、従来のパーチェスファネルの「購買まで」で終わりではなく、その先の消費者の行動を追跡して満足度を高めることまで求められるようになり、インフルエンスファネルの重要性が高まりました。
また昨今はサブスクリプション、SaaS、ECサイトといった継続利用が求められるビジネスモデルが増えていることも、インフルエンスファネルがより重用されるようになった理由と言えます。
ちなみにインフルエンスファネルでは、漏斗が逆さま(下が広い三角形)になっています。これは顧客が紹介・発信の段階に進むことで新規の見込み客の数が増える様子を示しています。
ダブルファネル

勘の良い方なら、もうお気づきかもしれません。ダブルファネルとは文字通り「パーチェスファネル」と「インフルエンスファネル」を組み合わせたモデルです。
昨今の企業のマーケティングではパーチェスファネル、インフルエンスファネル、それぞれ単独での利用では不十分です。むしろ単独で使うことで「新規顧客の獲得」と「囲い込み」、「口コミの拡大」といった各フェーズの施策に統一感がなくなり、思うように成果が出ないことがあります。
ダブルファネルでは新規顧客の獲得から顧客の維持、発信力の強化までを1つのファネルで捉えることで、効率の良い、筋の通った施策の実行を目指します。
マーケティングファネルの活用例(ファネル分析)
具体的にどのようにマーケティングファネルを使えばよいのか、疑問が湧いてきているかもしれません。
「マーケティングファネルの目的」の項目でもお伝えしたように、マーケティングファネルはそもそも
- 消費者の購買行動の流れを理解する
- 購買に至るまでのボトルネックを特定する
- 各段階でのアプローチを明確にする
といったことを目的としています。まずは自社のビジネスをファネルに当てはめて消費者の行動を大まかに把握しましょう。
その後に「2. ボトルネックの特定」「3. アプローチの明確化」に進みます。
ボトルネックの特定
ボトルネックを特定するシンプルな方法が各段階における成果の実数・割合(コンバージョン率)を確認することです。

例えば「認知」の段階で広告を打ち出して表示された回数を100人とし、そのうちの60人が「興味・関心」を持って自社サイトに訪れたとします。しかしその後の比較・検討の段階(例えば競合サービスとの比較記事コンテンツなど)に進む人が極端に減っていることがわかれば、そこに改善の余地があることがわかります。
ボトルネックの原因はデータから予測するほか、顧客へのアンケートを通して特定する方法などがあります。
アプローチの明確化
どの段階に課題があるのか、またその原因は何か仮説立てたら、その段階に応じた対応策を考えます。以下は各段階における、よくある施策例です。具体策を検討する際に参考にしてください。
- 認知
広告クリエイティブの修正、ターゲティングの見直し、新しい媒体でのコンテンツの発信、プレスリリース - 興味・関心
商品・サービスの紹介ページの改善、必要な情報の追加、セミナーの開催、ホワイトペーパーの作成、メルマガの発信、SNSでの交流 - 比較・検討
競合との比較資料作成、特別なキャンペーンの実施、デモやトライアルの提供、事例紹介 - 行動
購入手続きの簡略化、特別オファーの提示 - 継続
フォローアップメール、購入者特典の付与、ポイント制度の導入、新製品の情報提供、カスタマーサポート - 紹介
紹介プログラム(紹介者・被紹介者へ特典付与)、満足しているユーザーへのはたらきかけ、コミュニティを立ち上げ顧客同士の交流を促進、顧客向けのイベント・キャンペーンの実施 - 発信
SNSでの発信・レビュー評価を促す、アフィリエイトプログラムの導入、アンバサダーの任命
参考:カスタマージャーニー
各段階の施策を検討する際にカスタマージャーニーを活用するのも一案です。
カスタマージャーニーとマーケティングファネルはいずれもユーザーが認知してから購買に至るまでの流れを可視化するツールです。カスタマージャーニーは、より消費者の心理と行動にフォーカスすることに特徴があります。
特定の段階にいる消費者が何を考え、どんな行動をするのか整理することで、適切なタイミングで最適な施策を検討しやすくなります。

「マーケティングファネルは古い」「もはや死んだ」説
マーケティングファネルを学び始めると「マーケティングファネルは古くて使いものにならない」とか「マーケティングファネルは死んだ」※ などという過激な意見を見かけるようになり、「今、自分は時代遅れなことを学んでいるのか」と不安になるものです。
※2015年にGoogleのデジタルマーケティングエバンジェリストだったアビナッシュ・コーシック氏がカンファレンスで発言
このように言われる主な理由は以下のようなことが考えられます。
- 消費者の行動の多様化
WebやSNSの普及により、顧客の購買行動が複雑化して、一直線に進むファネルでは説明できない。例えば商品に興味を抱き検索していたユーザーが離脱し、数日後に突然戻って来る、といった説明できない行動が起こっている - 販売チャネル(媒体/経路)の複雑化
実店舗やオンラインショップだけでなく、SNS、ブログ記事、インフルエンサーの発言など、多様なチャネル(媒体/経路)から購入する機会が増え、従来のモデルではすべてをカバーできなくなっている
先に紹介したインフルエンスファネル、ダブルファネルもこうした変化に対応するかたちで登場したと言えます。
マーケティングファネルは今も有効
結論、マーケティングファネルの基本的な考え方は今もなお有効で、基礎教養として理解しておくことは重要です。学びを辞める必要はありません。
特にB to Bビジネスにおいては、個人消費者ほど行動の多様化・複雑化が進んでいません。従来のファネルモデルのように順を追って購買が進められることが多く、現代のビジネスでも十分活用できます。
また従来のマーケティングファネル(パーチェスファネル)が不十分であっても、新しいモデル(インフルエンスファネル、ダブルファネル)で補うことができます。その時々に応じて柔軟に組み合わせることで、マーケティング精度を高められます。
まとめ
この記事では消費者が商品やサービスを認知してから、実際に購入に至るまでの流れを段階的に分類して示すフレームワーク「マーケティングファネル」について、概要や種類、具体的な活用方法を紹介しました。
- 「AIDMAの法則」をベースに「認知(Attention)」「興味・関心(Interest)」「比較・検討(Desire)」「行動(Action)」の4段階で示される
- マーケティングファネルを活用することで「顧客の購買行動の流れを理解できる」「一連のマーケティングの中でボトルネックになっている部分をあぶり出せる」「消費者の段階ごとに適切な施策を検討できる」といった利点がある
- 購買までの流れを示した従来型のモデル「パーチェスファネル」に加えて、購入後のユーザーの行動を示した「インフルエンスファネル」、「パーチェスファネル」と「インフルエンスファネル」を組み合わせた「ダブルファネル」が使用されることが増えている
マーケティングファネルは実に1世紀以上もの間、使われてきたフレームワークです。「古い」「終わった」という声もありますが、逆に言えば、それだけ長い間、マーケティングの「真理」として扱われてきたとも言えます。企業活動の基礎教養として理解しておいて損はなく、とりわけ、B to Bビジネスにおいては、今後も活用できるシンプルな考え方です。
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